オールドファームとは、スコットランド最大都市グラスゴーを本拠地とするセルティックFCとレンジャーズFCの対戦、または両クラブをまとめて表す呼称です。単なる同都市のダービーではなく、100年以上にわたる優勝争いに加え、宗教、アイルランドとの歴史的関係、政治的・文化的アイデンティティが複雑に重なってきました。この記事では、名前の由来、両クラブの違い、なぜこれほど激しいライバル関係になったのか、2012年のレンジャーズ問題後もオールドファームと呼ばれるのかまで、初めて知る人にも分かるよう整理します。
オールドファームとはセルティック対レンジャーズのこと
最初に結論を整理すると、オールドファームはスコットランドのセルティックとレンジャーズによるグラスゴー・ダービーです。両クラブは長期間にわたり国内リーグの中心的存在であり、リーグ戦だけでなくスコティッシュカップやリーグカップでも対戦してきました。まずは基本事項を押さえると、このライバル関係の全体像が理解しやすくなります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 呼び名 | オールドファーム |
| 対戦クラブ | セルティックFC対レンジャーズFC |
| 都市 | スコットランド・グラスゴー |
| セルティックの本拠地 | セルティック・パーク |
| レンジャーズの本拠地 | アイブロックス・スタジアム |
| 最初の対戦 | 1888年5月28日のセルティック初試合 |
| 最初の対戦結果 | セルティック5-2レンジャーズ |
| rivalryの特徴 | 都市・競技・歴史・宗教・文化的背景が重なったライバル関係 |
| 主な対戦機会 | スコットランド国内リーグ、スコティッシュカップ、リーグカップなど |
セルティックとレンジャーズは同じグラスゴーのクラブ
セルティックとレンジャーズはいずれもグラスゴーを本拠地としています。しかし、ホームスタジアムは同じ場所ではありません。セルティックはグラスゴー東部のセルティック・パーク、レンジャーズは市内南西部のアイブロックス・スタジアムを本拠地としています。
このためオールドファームは、マンチェスター・ダービーやマージーサイド・ダービーなどと同様に、同じ都市のクラブ同士が争うシティーダービーの一種です。ただし、単に「近所のクラブだから仲が悪い」という説明だけでは、オールドファームの激しさを十分に説明できません。社会的・歴史的背景まで理解することが重要です。
セルティック初試合の相手がレンジャーズだった
両クラブの歴史的なつながりは非常に古く、セルティックがクラブとして初めて試合を行った1888年5月28日の対戦相手がレンジャーズでした。この試合はセルティックが5-2で勝利しています。当時から現在のような険悪な関係だったわけではなく、試合後には両チーム関係者が交流した記録も残っています。
つまり、現在知られている宗教的・文化的対立がクラブ創設時から完全な形で存在していた、と考えるのは正確ではありません。競技上のライバル関係とグラスゴー社会の変化が長い時間をかけて重なり、現在のオールドファーム像が形成されました。
単なるダービー以上に注目される理由
オールドファームが特別視される大きな理由は、セルティックとレンジャーズがスコットランド国内サッカーで非常に大きな成功を収めてきたことです。両クラブがリーグ優勝や国内カップの主要タイトルを数多く争ってきたため、直接対決がシーズン全体のタイトル争いに影響することも珍しくありません。
さらにサポーターの歴史的背景まで重なるため、通常の首位攻防戦以上の意味を持つ試合として扱われてきました。初めて見る場合は「同都市の宿敵」「国内タイトルを争う強豪」「文化的背景の異なるサポーター層」という3つの要素を重ねて考えると理解しやすいでしょう。
なぜオールドファームと呼ばれる?名前の由来を整理
「Old Firm」を直訳すると「古い商会」「老舗企業」のような意味になります。サッカーの試合としては不思議な名称ですが、その由来には複数の説があります。特に知られているのが20世紀初頭の風刺画に由来する説で、両クラブの対戦が大きな興行として利益を生み出していたことを皮肉った名称だったと説明されています。
1904年の風刺画が有力な由来として知られる
広く紹介されている説では、1904年のスコティッシュカップ決勝でセルティックとレンジャーズが対戦する前に、当時のスポーツ紙に両クラブを風刺した漫画が掲載されました。そこには「The Old Firm」という表現が用いられ、セルティックとレンジャーズの対戦が大きな収益を生む関係であることを企業になぞらえて皮肉ったとされています。
つまり「永遠の宿敵」という意味から名付けられたというより、互いにライバルでありながら、対戦することで双方に大きな経済的利益が生まれる関係を一つの商売のように表現した名称だったという考え方です。その後、この呼称が両クラブおよび直接対決を示す言葉として定着していきました。
「old firm friends」から生まれたという説もある
別の説として、初期のセルティックとレンジャーズが比較的友好的な関係だったことから「old, firm friends」のように表現され、それが短縮されてOld Firmになったという説明もあります。ただし、この名称の起源について完全に一つの説だけで確定しているわけではありません。
したがって記事や解説で扱う場合は、「1904年ごろの風刺画を由来とする説が広く知られているが、別説もある」と理解しておくのが安全です。名称の意味を「宗教戦争」という意味だと捉えるのは誤りで、元来の言葉自体は宗教を直接示していません。
現在は試合そのものをオールドファームと呼ぶことが多い
現在のサッカー報道では「Old Firm derby」「Old Firm match」のように、セルティック対レンジャーズの直接対決を指す表現として広く使われています。また両クラブをまとめて「Old Firm」と表現する場合もあります。
日本語で「今日のオールドファーム」「オールドファームの結果」と書かれていれば、基本的にはセルティック対レンジャーズ戦を意味すると考えて問題ありません。大会名ではなく対戦カードにつけられた通称なので、リーグ戦だけでなくカップ戦で両クラブが対戦した場合にも使われます。
セルティックとレンジャーズは何が違う?歴史的背景を比較

オールドファームを理解するうえで最も重要なのが、両クラブが歩んできた歴史の違いです。一般にはセルティックがアイルランド系カトリック文化、レンジャーズがプロテスタントや英国ユニオニズムと関連づけて説明されます。ただし、現在の選手やサポーター全員を宗教・政治思想によって一括りにするのは正確ではありません。
| 比較項目 | セルティック | レンジャーズ |
|---|---|---|
| 創設 | 1887年 | 1872年 |
| ホーム | セルティック・パーク | アイブロックス・スタジアム |
| クラブカラー | 緑・白 | 青 |
| 歴史的な文化的背景 | アイルランド系移民、カトリック文化との結び付き | プロテスタント文化、英国・ユニオニスト的アイデンティティとの結び付き |
| 代表的な欧州での実績 | 1967年ヨーロピアンカップ優勝 | 1972年UEFAカップウィナーズカップ優勝 |
| 直接対決 | オールドファーム | オールドファーム |
セルティックはアイルランド系移民社会から誕生した
セルティックは1887年、グラスゴー東部で設立されました。設立に深く関わった人物として知られるのがマリスト会の修道士ウォルフリッドです。クラブの成立には、グラスゴーの貧困層、とりわけアイルランド系移民への支援という社会的背景がありました。
19世紀のグラスゴーにはアイルランドから多くの移民が流入しており、その中にはカトリック信徒が多数いました。そのためセルティックは次第にアイルランド系・カトリック系コミュニティーと強く結び付くクラブになりました。現在も緑色、ケルト文化、アイルランドとの歴史的結び付きはクラブのアイデンティティを語る際の重要な要素です。
レンジャーズはセルティックより15年早く創設された
レンジャーズは1872年、モーゼス・マクニール、ピーター・マクニール、ウィリアム・マクビース、ピーター・キャンベルら若者によって設立されました。セルティックの創設より約15年早く、クラブ発足当初から宗教的目的で作られたわけではありません。
その後、グラスゴー社会の宗教・民族的な構造やセルティックとのライバル関係の発展に伴い、レンジャーズは歴史的にプロテスタント系コミュニティーや英国への帰属意識、ユニオニスト文化などと結び付けて語られるようになりました。こうした背景が、セルティック側のアイルランド系文化との対照を生みました。
「セルティックはカトリック、レンジャーズはプロテスタント」だけでは不十分
初心者向けの解説では「セルティック=カトリック」「レンジャーズ=プロテスタント」と説明されることがあります。しかし、これは歴史的背景を理解する入口としては分かりやすい一方、現在のクラブやサポーターをそのまま分類する説明としては単純すぎます。
現代の両クラブには世界各国から選手が集まり、ファンの背景もさまざまです。クラブを応援するために特定の宗教を信仰する必要もありません。したがって、以下のように分けて考えると誤解しにくくなります。
- クラブ創設と発展の歴史には宗教・移民・地域社会が関係している
- サポーター文化にはアイルランドや英国との政治的・文化的アイデンティティが影響してきた
- 現代の選手やファン個人の宗教・思想をクラブだけから判断することはできない
- 宗派対立はオールドファームを説明する重要な要素だが、ライバル関係のすべてではない
「宗教が違うから戦っている」と単純化するより、競技上のライバル関係にグラスゴー社会の歴史的対立が重なったものと考える方が実態に近いでしょう。
なぜセルティック対レンジャーズはこれほど激しいのか
オールドファームが世界的に知られる理由は、一つの原因では説明できません。同じ都市を本拠地とすること、国内最大級のクラブ同士であること、長期間タイトルを争ってきたこと、さらに宗教・民族・政治・文化に関するアイデンティティが重なったことで、勝敗が通常のリーグ戦以上の意味を持つようになりました。
最大の理由は国内タイトルを直接争ってきたこと
サッカーとしての基本的な対立軸は非常に明確です。セルティックとレンジャーズは長期間にわたりスコットランド国内のリーグタイトルを争う中心的存在でした。そのため直接対決で勝点を奪えば、自分たちが3ポイントを得るだけでなく最大のライバルにポイントを与えないという二重の意味があります。
カップ戦でも同様で、準決勝や決勝で両クラブが対戦すれば、相手を直接敗退させてタイトルへ近づくことになります。歴史的な宗教問題を知らなくても、優勝争いという純粋なスポーツ面だけで十分に大きなライバル関係が成立する条件がそろっています。
宗教だけでなくアイルランドと英国をめぐる文化も関係する
ライバル関係をさらに複雑にしているのが、宗教に加えて民族的・政治的な文化です。セルティックのサポーター文化にはアイルランド系の歴史やアイリッシュ・アイデンティティとの結び付きが見られ、レンジャーズ側には英国への帰属意識やユニオニズムとの歴史的な関連が見られます。
北アイルランドをめぐる歴史などとも関連づけられるため、スタンドで使われる旗、色、歌などが単なるクラブ応援以上の意味を持つ場合があります。ただし、政治的主張についてはサポーター個人やグループによって考え方が異なり、すべてのファンが同じ立場ではありません。
宗派差別は両クラブも問題として扱っている
オールドファームの激しい雰囲気は大きな注目を集めますが、宗派差別や人種差別、暴力まで「伝統」として肯定してよいわけではありません。レンジャーズをはじめクラブ側も、宗派差別や差別行為を認めない方針を明確にしてきました。
歴史を紹介するときも、差別的表現や暴力を「激しいダービーだから仕方がない」と扱わないことが重要です。現地観戦をする場合も、宗教や政治に関係するチャント、旗、ジェスチャーには複雑な意味が含まれる可能性があります。意味を理解していない表現を安易にまねしない方が安全です。
試合の勝敗が街全体の話題になりやすい
セルティックとレンジャーズはどちらも大規模なサポーターベースを持ち、グラスゴーだけでなくスコットランド内外にファンがいます。そのため直接対決の結果は、単に90分間のサッカーの結果ではなく、職場や家庭、地域社会で長く話題になるほど大きな意味を持ってきました。
特に優勝争いが接近しているシーズンでは、オールドファーム1試合の結果が最終順位を左右する可能性があります。歴史的背景を抜きにしても、試合前後の注目度が非常に高くなりやすい対戦です。
2012年のレンジャーズ問題後もオールドファームなのか
オールドファームについて調べると、「2012年でオールドファームは終わった」「現在はグラスゴー・ダービーと呼ぶ」という意見を見ることがあります。背景にあるのがレンジャーズの2012年の経営問題です。この問題はクラブの法人・リーグ所属をめぐる議論とサポーターのアイデンティティが絡むため、立場によって表現が異なります。
レンジャーズは2012年に経営危機を経験した
レンジャーズは2012年に深刻な財務問題に直面し、旧運営会社が清算手続きへ進みました。その後クラブはスコットランドのリーグシステム下位カテゴリーから競技を再開し、数シーズンかけてトップリーグへ戻っています。
この出来事によってセルティックとレンジャーズがリーグ戦で対戦しない時期が生じました。長年毎シーズンのように行われていた直接対決が途切れたため、スコットランドサッカーにとって非常に大きな出来事となりました。
一部のセルティックサポーターは「Old Firm」を使わない
2012年の出来事をきっかけに、一部のセルティックサポーターなどは、現在のレンジャーズを以前とは別の存在とみなし、「Old Firmという関係は終わった」という立場を取ることがあります。そのため「グラスゴー・ダービー」と表現する人もいます。
一方、一般的なサッカー報道やレンジャーズ側、競技を説明する文脈では現在も「Old Firm」という呼称が広く使われています。したがって「現在はオールドファームという名称が完全に使われなくなった」という説明も正確ではありません。
初心者は呼称をめぐる立場の違いを知っておけばよい
検索ユーザーが試合を調べる目的であれば、「オールドファーム=セルティック対レンジャーズ」という理解で基本的には問題ありません。ただし、現地のサポーターとの会話では、この名称そのものについて異なる考えを持つ人がいることを知っておくと理解が深まります。
つまり、名称には2つのレベルがあります。一般的なサッカー用語としては現在も広く通用する一方、クラブの歴史や2012年の出来事をどう捉えるかによって、一部では使用を避ける人もいるということです。
オールドファームを見る前に知っておきたいポイント

初めてオールドファームを見る場合、歴史をすべて暗記する必要はありません。「両クラブの成り立ち」「タイトル争い」「宗教・文化的背景」「現在の呼称をめぐる事情」という4点だけ理解しておけば、一般的なリーグ戦とは違う緊張感の理由が見えてきます。観戦時には大会や順位も確認すると試合の重要度を判断しやすくなります。
まず大会と順位を確認すると試合の意味が分かる
オールドファームは特定の大会名ではないため、リーグ戦でもカップ戦でも行われます。観戦前には、どの大会の試合なのかを確認しましょう。リーグ戦なら現在の順位と勝点差、カップ戦なら準決勝・決勝などのラウンドを確認するだけで緊張感の理由が分かりやすくなります。
特にリーグ優勝争いで両クラブの勝点差が小さい場合、直接対決はシーズン最大級の重要試合になります。一方でカップ戦の場合は引き分けで勝点を分けるという考え方ではなく、勝ち上がりを争うため試合展開も変わります。
クラブカラーを知れば初観戦でも見分けやすい
セルティックは緑と白の横縞シャツで知られ、レンジャーズは青をクラブカラーとしています。映像を初めて見る人でも、この色を覚えておけば両チームを見分けるのは難しくありません。
スタンドでも色の違いが明確なので、映像から両クラブのサポーターエリアを把握しやすいでしょう。ただしユニフォームはシーズンや大会によってアウェー用などが使われるため、必ず緑対青になるとは限りません。
セルティック所属の日本人選手をきっかけに知る人も多い
日本ではセルティックに所属した日本人選手を通じて、スコットランドリーグやオールドファームに興味を持った人も少なくありません。中村俊輔がセルティックで活躍した時代には日本でも直接対決が注目され、その後も日本人選手がセルティックでプレーしたことで認知度が高まりました。
ただしオールドファームの価値は特定選手の出場だけで決まるものではありません。両クラブの100年以上にわたる競争そのものが中心にあり、日本人選手の活躍は日本からこの対戦を知る入り口の一つと考えるとよいでしょう。
初観戦では歴史を4段階で理解すると分かりやすい
複雑な歴史を一度に理解しようとすると、宗教・政治・民族問題ばかりが目立ってしまいます。初心者は次の順番で整理すると、サッカーとしてのオールドファームと社会的背景を混同しにくくなります。
- セルティックとレンジャーズは同じグラスゴーのクラブである
- 両クラブは長年スコットランド国内タイトルを争ってきた
- 歴史の中で異なる宗教・民族・文化的背景と結び付いていった
- 2012年のレンジャーズ経営問題以降は名称をめぐる考え方にも違いがある
この順序で理解すれば、「宗教対立だけの試合」と考えることも、「単なる同都市ダービー」と考えることも避けられます。競技と社会の両面を持つことこそ、オールドファームを理解する重要なポイントです。
まとめ
オールドファームは、グラスゴーを本拠地とするセルティックとレンジャーズによる伝統的なライバル対決です。1888年のセルティック初試合から両クラブの関係は続き、国内タイトル争いに加えて、アイルランド系移民、カトリックとプロテスタント、英国やアイルランドに関する文化的アイデンティティなどが重なって現在のライバル関係が形成されました。ただし現在の選手やファンを宗教だけで一括りにするのは適切ではありません。2012年以降は呼称を使わない立場もありますが、一般的なサッカー報道では現在もセルティック対レンジャーズを示す言葉として「オールドファーム」が広く使用されています。

